Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
時を同じくして、ローはドフラミンゴと会談を行っていた。
会談といっても雑談のようなものだ。
年に一度のこの機会は、常日頃邪険に扱っている分の埋め合わせだ。
ドフラミンゴから提示される仕事の話を適当に聞き流しながら、ローは頭の中でナツのことを考えていた。
部屋を出る自分に向けたあの笑顔。
どこか不自然に見えたそれが、少し気がかりだった。
「珍しく上の空だな。何か気になることでもあるのか?」
ローは疎ましく思っていようが彼は叔父。
幼い頃から成長を見守ってきたドフラミンゴには、心ここに在らずな甥っ子の様子にすぐに気づいた。
隙を見せるなど珍しいとでも言いたげに、口端をいびつに吊り上げ面白そうに尋ねてくる。
ローはそんなドフラミンゴに眉をひそめると、何でもないと話の先を促した。
「先も何も、もう粗方終わったんだがな」
更に愉快そうに笑みを深めるドフラミンゴ。
この油断ならない相手を前に、話の終わりにも気付かない程考え込んでいたのだろうか。
ローは自分の失態に思わず舌を打った。
そんなローに気を留める様子もなく、ドフラミンゴは次の話を始めた。
「どうやら最近ファミリー内で裏切り者がいるようでな」
何やら言葉に含みを感じる。
ローは何となく嫌な予感がした。
「まさか犯人が唯一の肉親である弟とは思わなかったよ。大事な秘文書を盗まれた時は流石の俺も焦った」
秘文書、それはTrafalgar医院に関する極秘文書だ。
ドフラミンゴは中々ファミリーの幹部への誘いに応じないローに痺れを切らせ、医院を潰そうとしている。
そこに書かれているのは、ローが院長に就任するより前に揉み消された医療ミス事件の詳細。
被害者や遺族、それに関わった医師や看護師、更にはそれを揉み消した当時の院長の個人情報。
当時の出来事が事細かに記されたそれをメディアに流せば、騒動どころか病院の信用は瞬く間に失墜するだろう。
だがそれはローの知らない事実。
叔父が話す秘文書が己の身を脅かすものであることを、ローはこの時知らなかった。