Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
次第に激しくなる口づけにうっすらと目を開いたナツは
至近距離にあるローの瞳に映る自分自身の顔を眺めていた。
目は合っている筈なのに、どこが自分を見ていないかのような彼の瞳。
そこに込められた思いに、ナツは全身が冷たくなる感覚を覚えた。
「…んっ」
軽いリップ音と共に口づけから解放される。
ローは乱れた呼吸が整わないナツの頬を撫で、そろそろ時間だと立ち上がった。
(いけない。)
咄嗟に引き止めようと伸ばした手を、何とか抑える。
ざわざわと煩い心を無理やり封じ込め、ナツはパーティー会場へ戻るローを笑顔で見送った。
「遅くなるかもしれねぇ。先に寝てろ」
ナツの笑顔の裏側に気付くことくなく、ローは部屋を出た。
一人きりになったその広すぎる部屋で、ナツは閉じられた扉を暫く見つめていた。
(本当は…分かってたんだ)
ソファーに仰向けになり、高い天井を仰ぐ。
気づきたくなかった。
気づかなければよかった、こんな気持ち。
目を閉じれば、今までローが私にしてくれたことや、かけてくれた言葉達が蘇ってくる。
最近ローは優しい目しかしない。
無理矢理抱かれて閉じ込められていた時のような
見ているだけで伝わってくる恐ろしさや激情は、彼の中にはもう見当たらない。
こんなとこまで無駄に豪華だなと、天井に施された装飾を眺めていると
視界を滲ませていたそれは、こめかみを伝って流れ落ちた。
彼に思い人がいたことを知ったのは1週間前。
院長室の扉を開けようとした時、中からローの声が聞こえた。
彼以外の声は聞こえなくて、きっと誰かと電話をしているんだろうと思った。
出直そうと思い、ドアノブから手を離そうとする。
でも私は聞いてしまったんだ。
なんであの時、すぐにあの場を立ち去らなかったんだろう。
なんでローはあのタイミングで、あんな話をしてたんだろう。