Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
ナツがため息を吐くのを見て、更に彼女達は良い気味だとでも言いたげにクスクスと笑っている。
…帰って風呂に入るか。
そうだ、そうしよう。
腹も立つけど
文句を言うのも応戦するのも、色々と面倒だ。
行き先を控え室から家へと変更し、予定通り会場を出ようと身を翻すと
会場の中心で来賓客に囲まれていた筈のローが、何時の間にか目の前に立っていた。
大きな赤いシミが目立つドレスと、ずぶ濡れのナツの姿に、ローはあからさまに眉をひそめる。
「いや、うん!ぼーっとしてたらグラスが宙を舞いまして。……ドレスごめんね、もうシミ取れないかな?」
ローの恐ろしい程の視線に耐えきれず、ナツは適当に理由をつけて誤魔化そうとした。
なんで私のせいじゃないのに、私が肝を冷やしながら言い訳しなきゃいけないんだ。
別に看護師達を庇うつもりなど毛頭ないナツであったが
上手く対処しきれなかった事も相まって、それをローに話すのが憚られていた。
そんなナツにため息を吐いたローが、そっと赤ワインで濡れた彼女へと顔を寄せる。
「……っ」
ローの舌が、ナツ頬をゆっくりと見せつけるようになぞった。
その様子には周りの看護師達もギョッと目を見開く。
「いつまでもんな格好で居たら風邪引くだろ」
そう言ってローは、ナツのドレスのファスナーに手をかけた。
「いやいや、待て。まさかとは思うけど脱がそうとしてます?」
若干引いた目を向けるナツに、ローはニヤリと目を細めた。
「まぁ確かに。どうせ脱がすならここじゃねぇ方が良いか。……流石にここじゃ、せっかく脱いでもできねぇもんな」
ワインを掛けた看護師に目線を向け、ローは卑しく口の端を吊り上げる。
その様子に、看護師達は息を呑んだ。
ナツもナツで、口をぱくぱくさせながら頬を赤らめている。
ローはその様子に満足したのか、ナツの膝裏と背中に腕を回し、彼女を抱えてその場を後にした。
会場を出ていく二人の後ろ姿を、看護師だけではなく来賓客全員が
何も言葉を発せずにただ、見つめていた。