第7章 【徳川家康】よく居る二人のよくある話
私の言葉を聞くなり、先輩の顔がぼん、と音を立てるように一気に赤らんだ。
つられて動転した、私の顔にまで熱が集まってくる。
「…千花、さっきの話やっぱり聞いてたろっ…!!」
「あ、あう、あの、ごめんなさい先輩…ついっ…!」
一頻り照れた後、先輩は気を紛らわす様に大きく息をつき。
そして、じろり、と意地悪気な…しかし、微笑みを湛えた眼を私に向ける。
「聞いてたんなら、話は早いね。俺のなら、それ。早く頂戴」
「…どうして、私のは貰ってくれるんですか?」
答えの予想のつく問いを、しかしどうしても先輩の口から聞きたくて。
未だに逸る胸を宥めながら、絞り出した声に、先輩はまた一層楽しげに目を細めた。
「…そんな分かりきった事、知りたいの」
「知りたい、です」
「なら、毎年の様に逃げたりせずに。きっちりと向き合ってよね」
視線がかち合う。
両腕を包みに取られたままの私に向かい、じり、と先輩が距離を詰める。
逃げようったって逃げられない、雰囲気の中で。
春めいた南風がふわり、と残り少ない枯葉を攫っていく音だけが辺りに響き。
そして私は、予感通りに目を閉じた――