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【イケメン戦国】短編集✲*゚

第6章 【猿飛佐助】無知に基づいた論証






「佐助くん!!カカオ豆ってどうしたら手に入るのかな!?」




突然安土城に呼び出され、ごく真剣な表情でそんな質問をぶつけられ――佐助は、頭の中に入っている膨大な知識を紐解くように。
眼鏡のブリッジに、筋張った、しかし細長い指を当てた。


きらり、と光を受けたレンズの輝きに期待する彼女を他所に、佐助は淡々と答えを返す。







「…残念だけど。
チョコレート、なら日本に伝わるのはまだ先の話だ」







先回りした返答に、質問の主――佐助が敬愛して止まない徳川家康公と恋仲であり。
この世で出会ったただ一人の現代人仲間である、彼女は。


大袈裟なまでに、悲しんだ様子で机に突っ伏した。






「やっぱりー!?信長様にそれとなくチョコレートの事聞いても、知らなかったんだよー…じゃ、バレンタインは違うスイーツを考えないとだね」



「そもそも、カカオ豆からチョコレートを作るのは相当大変な作業。豆を超高温で炒ってから、冷めないうちに一つ一つ手作業で胚芽を取り除いて…

まぁ、一般人には、まして此処じゃ無理だ」




切り替えの早さが、彼女の持ち味か。
先ほど突っ伏すまで悲しんでいた彼女はしかし、既に目を輝かせながら。
饅頭、餅、団子、と此処でも作れそうなスイーツの名前を列挙する。




「今回はねー、政宗にも義理…まん?義理餅?を渡したいから、頼れないんだよね」


「…それで俺。成程。

でも、俺が持ってるのは知識だけだ。実践となると…」


「それは勿論!佐助くんにも渡したいの、バレンタインまであと三日…それくらいは、安土に居てくれるでしょ?」



佐助の予定など全く考慮しない物言い。
しかし今回、助けて、と報せを受けた時から内容に大方の予想を付けていた佐助。
元よりそのつもりでいたから、問題ない、と返すと――彼女は嬉しそうに笑った。


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