第4章 【徳川家康】ちびっこシンドローム
「人質として囚われて、独りで眠る夜も。眠りの淵に、多分、あんたがいたんだ。きっとずっと、俺が忘れている間も、どこかにいたんだろう、ね…
俺のこんな弱っちい部分まで、背負って歩いてくれようとする、千花の強い所。
…すきだよ」
その言葉に、私は感極まった様に、離れていた身体をぎゅ、っと押し付ける。
家康は突然の事に耐えきれず、バランスを崩し。
春の花の中、二人して倒れ込んだ。
下敷きになってしまった家康の胸に、ぐりぐりと顔を押し付け、泣く。
「家康、わたしがっ…私が、必ず幸せにしてあげるからねっ…!!」
「…それは、俺の言いたい事なんだけど?まぁ、いいか…頼もしいね、千花」
遠くから、騒がしく聞きなれた声が、だんだんと近付いてきても――いつもなら恥ずかしい、と分かたれるのに、今日ばかりはと、どちらも腕を解かない。
また風が吹く――ただし、今度は暖かく優しい風が、周りの花びらをふわり、と巻き上げて。
そして花びらが祝福するかのように、私たちの上にひらひらと舞い落ちるのを、笑い合いながらただ見つめていた。