第11章 【徳川家康】落ちると下りるは速度の違い(裏)
「家康様」
「…なに」
「もぅ、焦らさないで、ください」
今の、紆余曲折を経た私たちだからこそ、こうして睦みあえるのだ、と。
ぴったりと、心も体も寄せあって、漸く気付く。
過去にも未来にも、今にしか、今の貴方はいない――
家康様は何も言わずに、頷くと。
額の汗をぐいと拭い、私の両の足を抱えた。
気遣うように優しく見つめてくれる家康様を、見つめ返す。
ぐり、と押し付けられた灼熱の塊に、はしたない程期待に満ちた息が漏れた。
「もう、やめろったってやめられないからね」
「…私はもうとっくに、やめられませんよ?」
連れてこられて始まったけれど、貴方を選んだのは私自身――
「私の好いところ、もっと見つけて」
そんな恥ずかしい言葉を口走って、無理矢理に顔を上げ、唇を押し付けるように合わせる。
下腹部に感じる鈍痛に、上がる声が口内で爆ぜた。
痛みが霧散したあとに、じんわりと溶け合って、均一になっていく体温が嬉しくて、しがみつく。