第2章 風のざわめき
~ クニミside ~
数日前、何気なく誘われてメシ食いに入った店。
そこでの店主と思しき男と、イワイズミさん達とのやり取り。
それがどう言う意味を持っているのかばかりが頭を巡り、ハッキリ言ってメシの味なんて覚えてねぇ。
オイカワさんもイワイズミさんも、何を考えているんだろう。
数日前に命じられた人探し。
その風貌そのままの男が二人もここにいるって言うのに。
それより、ブラックツインズ。
少し前には、オレだって何度も聞いた名前。
そいつらは普通の海賊と呼ばれるヤツらとは違って。
···いわゆる、義賊。
人々から奪ったモノを取り返し、代わりに礼を受け取り旅をする。
オレ達とは、違う。
いや、似てる···のか?
オレ達は、安易に奪ったりはしない。
それこそ悪戯を働いているヤツらから奪い取り、自分たちのものにする。
金も、宝も···オンナも。
ま、最後のは船長だけだからオレには関係ないけどな。
ただ、船長が悪名高いのは。
オモチャを手に入れ、飽きたら捨てる。
そのせいで多くを敵に回し、陸でも船でも···襲撃を受けることもある。
まぁ、負けた事はない。
そういった事に関しては、イワイズミさんが先読みして的確に指示を出し応戦に真っ先に切り込むから。
それでも自分の手柄にはせず、なんだかんだ船長を立てる。
···龍の頭はひとつで充分だからな。
そう言って船長の一歩後ろにいる。
今回の件もそうだ。
船長の気紛れと思わせといて、実は操られてる感がプンプンだ。
あの二人はブラックツインズの船のヤツらを見つけて、何がしたいんだ?
名を上げる?
人員の確保?
いや、たった四人組を手に入れたところで?
待てよ?
そういや確か、主だって容姿を聞く人間は確かに四人だ。
だけど、聞き込みで手に入れた情報は···他にも船の番をする人間とかいたはずだ。
じゃあ、何のためだ?
影「おい、辛気臭いツラ晒すなら他所へいけ。邪魔だ、気が散る」
「うるせぇよ、この顔は元からだっつーの」
海図を広げる航海士のカゲヤマにそう返して、ひとつ舌打ちをしながらその場を離れた。
船長のお気に入りだか知らねぇけど、クソ生意気なヤツ。
舵の腕は天才的だからとか、そんな事でこの船に乗せられているくせに。
少し、街を歩いてみるか···