第1章 水鏡の揺らぎ
~ イワイズミside ~
クニミが言ったツインズという言葉に、少し前まで海を賑わせていたヤツらがいた事を思い出す。
そうだ。
確かにいたんだ、そいつらは。
妙に苦い顔をした他の船のヤツらが口々に言う名前。
それが···
ブラックツインズ
そっくり、いや···同じ顔をした男達がいる、海賊船。
他の連中の話じゃ、どんな戦いでも卒なくこなし、相当に頭がキレる男と。
派手な見た目とは裏腹に、大層な腕利きの剣士とかいう男。
それに。
うっかり見た目に騙されてしまう、いい腕を持ったスナイパーの女と、美しい容姿の航海士の女。
後は数人だけ手下がいたらしいが、主だった戦闘人数は···そんなモンだったな。
そして。
ここにいた人数と、同じだ。
だが、しかし···だ。
さっきいた女共は、身篭ってる女と子供じゃねぇか。
到底、ウワサに聞いた四人組とはかけ離れてる。
それに、美しい容姿のってのは当てはまりそうで分かるが、いい腕を持ったスナイパーの女ってのがあのチビっこい奴と同一人物とは思えねぇ。
なんせ、魚屋の店のヤツに言い寄られて逃げられねぇ位ドン臭いヤツだったからな。
慧「ところでアンタら、どっかの船の?」
国「なっ?!···まさか知らないとは言わせない。オレ達は泣く子も黙るセイ、」
「クニミ、黙れ」
国「···はい」
名乗りをあげようとするクニミを黙らせ、代わりにオイカワに目配せをする。
及「オレ達を知らないとか、もしかして田舎モン?オレ達は···そう、泣く子も黙るセイジョーの人員。あ、ちなみにオレが船長ね!」
パチンと音がするようなウインクをしながら、オイカワが己の正体を明かす。
慧「へぇ···名前だけは聞いた事はあったが、こりゃまた凄い海賊様がお見えになったな」
···この男。
セイジョーと聞いて動揺もしない。
他の街のヤツらは、その名を聞けば震え上がりながら命乞いをするってぇのに。
それに、あっちの男。
あからさまに女共を奥に下げるあたり、恐らく···少なからずオイカワの女好きな事を知っているんだろう。
コイツら、何だかきな臭ぇ···
双子の男。
店の名前がツインズ。
コイツら、何か隠してそうだ。
仮に人違いの可能性があるとしても。
もう少し、揺さぶって見るとするか···