第8章 酒は飲んでも呑まれるな(薬師視点・政宗・謙信・小十郎・かすが
「珍しく軍神も、その影も邪魔に入ることがねぇんだ。こんなチャンス、逃すと思ってんのか?」
「え?」
そういえば……いつもならば、一緒に居てこのような態度を許す筈のない謙信様からなんの反応もない。
かすが嬢だって、なんだかんだツンデレ炸裂させつつも、ここぞという時には助けに入ってくれていたというのに。
降ってわいた疑問に、政宗様の腕の中から首だけぐるんと回してみたらば。
「ああ、うつくしき つるぎよ…」
「謙信様ぁ…」
「うわぁ……出来上がってる…」
いつの間に、かすが嬢まで酔っぱらっていたのか。
二人とも、白い面をこれでもかと赤く染め上げ、見つめ合いながら薔薇の花を咲き誇らせていた。
これは駄目だ。襲撃でもない限り、寝て起きるまで正気に戻りそうにない。
「だから言っただろ?邪魔に入らねぇってな」
「政宗様…いったい、どれだけ飲ませたんですか?」
謙信様って、あんなたおやかな容姿のわりに、かなりの酒豪の筈なんですけれど。
いまだかつて、あそこまで酔っぱらっている謙信様を私は見たことがない。
「Ah-?量的には大したことはないぜ、ただ…」
「ただ?」
「謙信の杯にだけ、猛獣でも一杯で気を失うほどの強い酒を注いでおいた」
「なんてことしちゃってるんですか!?」
急性アルコール中毒なんてものも、あるんですよ?
万が一、それで倒れることになったら、どう責任を取るつもりですか!!
あああ、大丈夫でしょうか?心配です……少し、治癒回復をかけた方がよいのでは…。