第8章 酒は飲んでも呑まれるな(薬師視点・政宗・謙信・小十郎・かすが
気になったものを少しずつ、小皿につまんではひとくち味見をして。
いいと思ったものを、謙信様の前に並べていく。
「どうぞ、お召し上がりください」
「ありがとうございます、ひかりよ」
一足先に、伊達様とお酒を酌み交わしはじめた謙信様が、優雅な所作で箸を口へ運ぶ。
「…これは、さけに あいますね」
「それは、良かったですね」
「ええ。わたくしに えんりょせず、そなたも たべなさい。せっかくの うたげです、たのしまなければ もったいない」
「いいこと言うじゃねぇか。謙信公には上物の美酒を、薬師どのには飲みやすい甘めの酒を用意してある。たまにはアンタも夜の宴を楽しめよ?いつも素面じゃつまらねぇだろ」
「いえ、ですが、謙信様を放っといて酔っぱらうわけには…」
「Ah-?まさか、俺の酒が飲めないとは言わせねぇぜ」
相変わらず強引な伊達様に、内心ため息を吐きながら。
差し出された杯を受けとる。
「たかが一介の薬師が、伊達家当主のお手みずから酒を頂戴するだなんて…ほかの方々に知られたら殺されそうな気がします」
「Ha!うちの奴らなら問題ねぇ、遠慮するな」
「ゆめき、しんぱいむようです。もしも そのような ぶすいな やからが あらわれたとしても、わたくしの そばにいれば だいじょうぶですよ。このけんしん みずから ちにしずめ、にどと くちが ひらけぬように してあげましょう」
二人から口々に言われ、視線を向けた片倉様には無言で首を横に振られ。
しかたなく諦めて酒の入った杯に唇をつけ、ゆっくり傾けた。
口の中いっぱいにふわりと甘やかな酒の風味が広がり、こくりと嚥下すると独特の熱で喉がジン…と痺れた。
「これは…とても飲みやすいですね」
とくにお酒が好きなわけではないが、すっきりとした甘さが癖になりそうだ。
これなら、私もグイグイいけそうな気がします。