【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第7章 卒業式 (月島 蛍)
ざわざわとした体育館に響く仰げば尊しのメロディーが、我慢していた涙腺を緩めて、目から涙が溢れ出していた。
卒業式で泣いて、目を腫らしたなんて言ったら、絶対に蛍に馬鹿にされるだろう。
そうは思っても、思い出さずにはいられない3年の思い出達が涙を止めてくれる様子はなくて…色々あったなんて言葉じゃ片付けられない…私の高校生活が終わろうとしている。
【卒業式】
「たかが卒業式でそんなに泣くとか…ありえないでしょ?」
式が終わって、外に出ると排球部の後輩達がお祝いの為に集まってくれていた。
自然とその輪に合流すると、蛍が卒業式だと言うのに、いつもと変わらない様子でそこに居た。
小学校でも、中学校でも…そうだ。
蛍は卒業という行事に関心が薄い。
今までは…卒業したって春からも同じ学校に進学していた。
でも…。
「皆とお別れ…寂しいんだもん。蛍とだって別の学校だし…。」
蛍は東京の大学に進学する。
「別の学校って言ったって、皐月さんもツッキーと同じ東京の短大でしょ?」
山口君が私と蛍を交互に見ながら言う。
そう。私も生まれ育った宮城を離れて、春からは東京で暮らす。
遠距離ではない…。
でも、これまで四六時中一緒に居たのだ…。
「ってか、影山どこ行ったんだよ。遅くない?」
日向君も式の間は泣いてたのか、少し赤くなった目元に笑顔を浮かべながら言った。
「あっ、影山くんは後輩の女の子達に囲まれていたであります!」
仁花ちゃんが手振り身振りでその人数の多さを伝えている。
「あぁ…あいつ後輩から大人気だもんな。無愛想なのに。」
そう笑う日向くんだって、インターハイでの活躍もあり、校内では大人気だ。
「ツッキーだって、さっき後輩に囲まれてたもんね!ほら、ボタンだって…。」
何に対抗しているのか山口君が皆に自慢気に言った後に、蛍の表情を確認して、一気に青くなった。
「山口…うるさい。」
「ごめん、ツッキー!皐月さんも!」
山口君が心底申し訳無さそうにこちらに頭を下げてくる。
「あっ…いや、別に…。」
気にしてないとは…言い切れなかった。
実はさっき合流した時から、かなり気になっていたが聞くタイミングと勇気が無かったんだ。
蛍の学ランのボタンが、袖のボタンまで含めて根こそぎ無くなっている状況について。