【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第5章 愚問 (影山 飛雄)
絶対に言っちゃいけないと思ってたし、言わないように気を付けていたけど…流石に我慢の限界だ。
「んで、言っちゃったわけ?あのバレー馬鹿の飛雄ちゃんに?」
部室で及川さんがお腹を抱えて笑っている。
「いや、私もそれだけは言っちゃダメだと思ってたんですよ。でも…誕生日忘れるとか…あんまりです!」
普段ならうっとおしいだけだから、早く体育館へ行け!とか思う及川さんだが、今日に限っては話を聞いて欲しくて、私が引き止めている。
「いや、でも…流石にダメでしょ。バレーと私、どっちが大事なの?って…今時安いドラマでも言わないよ。」
う…。
及川さんの言う通りだろう。
飛雄とは中学のバレー部で一緒だった。
その時は…なんか、空回りしてるなぁ…残念だなぁって印象しか無かったけど、別の高校に進んだ飛雄と練習試合で再会して…あっという間に恋に落ちた。
たった1,2ヶ月会わなかっただけで、あんなにカッコよくなってるなんて反則だ。
見掛けが変わったとかじゃなくて…なんか、雰囲気が変わった。
私の通う青城から、飛雄が通う烏野は少し距離があったけど、何かしら理由を付けて会いに行った。
そんな感じで数ヶ月が過ぎて、私の決死の告白に飛雄が顔を真っ赤にしながら頷いたのは半年前の話。
「でも、彼女の誕生日…忘れます?しかも、向こうからわざわざ確認してきたのに!」
普段はバレーの話ばっかりの飛雄が私に質問して来たのは、本当に気まぐれだったんだと思う。
「和奏の誕生日っていつだ?」
気まぐれだったんだろうけど…わざわざ確認されたら、こちらは期待するってもんだろう。
それが、当日になってもデートどころか、電話もメールもない。
ヤケになって、こちらから誕生日だとメッセージを送って、返ってきた内容に流石に腹が立った。
[あっ、誕生日だったな。おめでとう。]
全く覚えてないじゃん…。
バレーの事なら、あの試合のセッターの動きがどうだとか、何セット目のどのトスがどうだったとか…呆れるくらい詳しく覚えてるくせに。
[飛雄は私とバレーのどっちが大事なの?]
絶対に言わないと決めていた言葉を、右手の人差し指で打ち込んで送信するまでは、わずか30秒。
既読はついたのに返ってこない返信に、凄い後悔に襲われてから一晩…と半日。
返信がないまま、もう翌日の放課後だ。