第2章 ハイキュー!!音駒で梟谷
――それを見たとき、運命だと思った。
毎年恒例、梟谷グループの夏合宿。
音駒男子バレー部の臨時マネージャーとして同行した先にいた、顔だけは知っている木兎の後輩にして梟谷唯一の二年レギュラーである赤葦くん。
彼が休憩時間、手にしていた文庫本。
それはまさに今オレがハマッている超絶マイナーな、梟擬人化観察日誌物語……ジケイ・アシアカ著作の『梟ですがなにか?』だった。
「あの、赤葦くん…だよな?木兎の後輩の」
「…ああ、音駒の……秋月さん、ですよね?木兎さんから話は聞いてます」
はたして木兎がいったいどんな風にオレのことを話しているのか気にはなるが、まぁそれは置いといて。
「いつも木兎さんに厳しく躾をしていただいてるようで、ありがとうございます」
やっぱり捨て置けねー。
木兎あとで殴ってやる。
それにしてもこの赤葦くん、真顔でサラッと言ってくるから、嫌みなのか本気なのかサッパリ区別がつかない。
悪印象を与えたくはないので、ここはひとつ謝っておくことにしよう。
「いや、なんつーか、バカやるたびにそちらの主将ボコボコ殴って悪い」
「いえ、バカやらかす方が悪いので気にしないでください。俺たちじゃ止めるの無理なんで、迷惑でなければこれからもその調子でお願いします」
どうやら謝罪は要らなかったらしい。
「お、おお、わかった」
先輩でエースの木兎に対してまるで遠慮のない…むしろ先輩後輩が逆なんじゃなかろうかという物言いに、戸惑いつつも感心してしまった。
まだ二年なのに随分としっかりしてるなぁ…本来の性質なのか木兎によって培われたのかはたまた両方か。
うちの一、二年たちにも少し見習ってもらいたい。
…いや、アイツらはアイツらでかわいんだけどな。
「それで、俺に何か用ですか?」
「ああ!それなんだけどっ、その本、好きなの?」
つい行儀悪く指し示したオレの指先から、ゆっくり視線を自分の持っていた本へ向ける赤葦くん。
「ああ、これですか…まあ、嫌いじゃありません」
「オレ、今その本にハマッてるんだけど身近に読んでるヤツ居なくてさー」