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まだまだ青い白鳥たち

第1章 これからもずっと


瀬見くんが心配してくれるのはありがたかったけど、正直なところ高等部に入ってから授業も難しくなったし、部活の練習量も増えた。歓迎会での一件は私の記憶からどんどん薄れ…いや、ほぼ忘れていた。


「…正直、彼氏とか恋愛とか余裕ないかな。今はレギュラー目指して頑張らないといけないし」
「…だな。俺もちょっと気になってただけだから、気にしないで」


ふと後ろからチームメイトが呼ぶ声が聞こえて振り返る。私にサーブを打ってくれてた子が「なつみー!もう上がるねー!」と言いながら帰っていくのが見えた。私がありがとねー!と手を振り返していると、


「…俺がサーブ打とうか?」
「え、瀬見くんが?いいの?」
「遠慮すんなよ。俺はもう今日は部活あがりだし」
「ありがとう!」


まさか瀬見くんに練習付き合ってもらえるなんて。正直嬉しい。前に練習試合を見た時、瀬見くんはいいサーブ打つなぁと思ってたから。


「さっき少し見た感じだと、なつみちゃんは強めのサーブが苦手っぽいよな。ちょっとだけ力入れて打つわ」
「うん、よろしく」


バンバンっとボールを2回床にバウンドさせると、瀬見くんはジャンプサーブのステップに入った。


(これ…!!結構強めのやつだ…!!)


普段女子が打つサーブとは勢いが全然違う。コースは読めたからなんとか受け止められる!…けど。


「…っ!いたっ…」


受けられたものの、爪の先から少し血が出てきた。せっかくの練習なのにこのままだと続けるのは無理そうだ。


「なつみちゃん!ワリィ!」


瀬見くんがネットの向こうから慌てて走ってくる。


「ううん、こっちこそごめんね。ちゃんと受けてれば怪我なんてしないのに…」
「いや、少し力入れて打ち過ぎた。ごめんな、普段男としか練習してないから加減が難しくて。あ、俺絆創膏持ってるから、ちょい待ってて」


ジャージのポケットから瀬見くんが絆創膏を取り出した。「貸して」と言われるままに瀬見くんに手を取られる。慣れた手付きで手当てをしてもらっていると、体育館の入口から何か声が聞こえてきた。
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