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まだまだ青い白鳥たち

第1章 これからもずっと


「…あっ、天童くん!」


特徴的な髪色の彼を見つけて声を掛ける。ちょうど女子バレー部は朝練を終え、私は男子バレー部の体育館へ来たところだった。


「あー、なつみちゃん。なに、若利くん呼べばイーイ?」
「そう。お願いしてもいい?」
「モチロン。…若利く~~~ん!なつみちゃんだよ~~ん!」


時は4月。もうすぐ5月になるところだが、既に下の名前で私を呼んでいる天童くんには脱帽だった。おそるべしコミュ力…!



体育館の奥で汗を拭いている牛島が見えた。まだ高校一年生なのに上級生よりも体格が良く、威厳が感じられる。中等部の頃は同じくらいの身長の時もあったのにな。


「…緑川か」


目視で私を確認し、入口まで歩いてやってくる。やっぱり中等部の頃より背伸びたよな…なんて呑気に思っていると頭上から天童くんの声が降ってきた。



「二人は付き合ってないの?意外だヨネ」


ニマーっといつもの笑顔で天童くんは私を見つめてくる。この笑顔、全部を見透かされているようで、あんまり得意じゃないんだよな…。


「…うん。付き合ってないよ。牛島も私も全国目指してるしね」
「そういう問題じゃないでショ。自分のことちゃーんと考えないと、あとで後悔することになるヨ」


天童くんの言っている意味がよく分からず、首を傾げてしまった。彼はよくこういった言い回しをすることがある。私の知能では全く追い付けないのだけど。


「緑川、何か用事か?」
「あ、うん。新入生歓迎会ね、男子と合同でやることになったの。私は一年生のサブリーダーだから、牛島に色々手伝いをお願いしたくて…。いいかな?」
「ああ、構わない。手伝えることは何でも言ってくれ」


あまり笑顔になることはない牛島だけど、決して怖い人ではない。女子はもちろんだけど男子にも優しいし、真摯な対応は決して嘘がなく皆から信頼されている。


中等部時代、お互いに全国制覇が叶わなかった私達には妙な絆が生まれたみたいで。牛島は私にはとくに優しい…と、周りの皆は言っている。


「それにしても…」
「どしたの、牛島?」
「一年生のリーダーは諸越だろう?なぜお前が雑務をやっているんだ?」


牛島は少し心配そうな表情で私を見つめてくる。ほら、こういうところ本当に優しいんだ。
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