第1章 ショートケーキ(月島)
私と蛍は、18年来の幼なじみだ。
家が隣同士で、ついでに言えば母親同士が学生の頃からの親友でもあったりする。
お互いの家を行き来するのもしょっちゅうだったし、私の家は両親が共働きだったから、蛍の家に預けられて夕飯をご馳走になることも、それどころかそのまま泊まったりすることだって日常茶飯事だった。
私が「蛍ちゃん」と呼べば素っ気なくても「ひまりちゃん」と返してくれたし、中学に入って私が人目を気にして「月島君」と呼び方を変えたときも、貴方は変わらず私を名前で呼んでくれた。
いつのまにか、「ちゃん」付けが取れて、「ひまり」と呼ばれるようになって。
高校は進学先が別々だったからまた「蛍ちゃん」呼びに戻すと、190近くある男に今更ちゃん付けは気持ち悪いと苦言を呈され、「蛍」と呼ぶことになった。
それまで18年間、多分会わない日なんて殆どなくて、お互いにそれが当たり前で。
私の隣には蛍がいて、蛍の隣には私が居て。
それが当たり前の18年間だった。