第3章 禁断の果実
【 Jun 】
世の中には、手を出してはいけないものが存在する。
絶対に触れてはいけないもの。
【禁断の果実】
これは、俺がその果実を、規則を破ってまで
欲し食そうとしたお話。
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『あなた、これはここで良い?』
「…ん? ああ、そこで良いよ」
俺は今引越し作業に追われていた。
結婚してもうすぐ2年になる。
俺は今回初めて、会社で転勤を言い渡された。
だから、夫婦揃って新居に荷物を運んでいる。
妻には迷惑をかけるな…。
「そろそろお昼にでもしようか…」
『そうね、あ…引越し蕎麦でも食べる?』
「やっぱりそれだよな、お願いしてもいい?」
『もちろんよ、あなたは休んでて?』
そう言って、小柄な彼女はキッチンへと
小走りで向かった。
俺はそんな彼女の提案にのり、ソファに
腰を下ろした。
この新しい地で、夫婦共々平和的に
過ごしていけるだろうか。
仕事だって上手くいくか分からない。
でも、やるしかないよな…家族がいるんだから。
リビングにある大きな窓から明るい日射しが
差し込んでいる。
きっと上手くいく。
その時はそう信じていた…。
『出来たよ〜、はやく食べましょ?』
「ありがとう、疲れてるのにごめんな」
『疲れてるのはあなたも一緒でしょ?
そんな事より、はやく食べましょうよ』
「ああ、頂きます」
『頂きます♪』
俺は彼女が茹でた蕎麦に、箸を差し込む。
一口目を口の中に放り込もうとした時、家のインターホンが鳴った。
「…突然なんだ?」
『あ、きっと私が頼んだ物だわ』
「頼んだ?」
『そう♪ 私、通販に今ハマってるのよ』
「そうか」
彼女は、席を立ち玄関へと行ってしまった。
通販か…そんなに面白いものなのか?
俺はそんな事を考えながら、蕎麦を啜った。