第13章 Sweeter than sugar
コチ、コチと時計の針の音が異様に大きく聞こえる。
もう夜の10時。
手早く食べられるご飯は作ってあるけど、そもそも彼は帰ってこれるのだろうか。
色々なことを考えながらソファに倒れこむように横になる。
なんだかどっと疲れが湧いてきて、睡魔が襲ってくる。
私はその眠気を抑えきれず、スッと夢の世界に入ってしまった。
「……天さん……」
そんな独り言は意中の相手には届かず、儚く消えてしまった。
天side
数ヶ月ほど前、最愛の人と結婚した。
世間では色々騒がれたけど、今ではそれも落ち着いてきている。
彼女は本当に可愛い。
惚気になってしまうけど、一つ一つ丁寧な言動とか、ボクを見つめる柔らかい視線とか、陶器のような肌とか、とにかくもう全てが愛しい。
ボクは残っていた仕事を猛スピードで片付け、急いで彼女の待つ家へと向かった。
彼女のことはもちろん愛している。
だから、彼女との子供も欲しい。
そんな二つの想いが溢れに溢れた結果、ボクは毎晩のように彼女を抱いている。
どんなに遅くなっても笑顔で待っていてくれる彼女を見ると、どうしようもなく抱きたくなる。
きっと今日もドアの先には笑顔の彼女がいるはず…!
そんな事を考えながら家に帰ると、彼女の姿が見えない。
電気はついているからいるはずだけど……。
「百合?どこにいるの?」
……返事はない。
何かあったのかと不安になりながらリビングに向かうと、ソファの上でスースーと可愛らしい寝息を立てている彼女がいた。
「寝てるの?こんな所で寝ると身体を痛めるよ」
「ん……」
彼女は一瞬顔をしかめ、すぐに規則正しい寝息を立て始めた。
困ったな。起きないや。
最近無理をさせすぎたかな。
とりあえずベッドまで運ぼうと思って手を伸ばすと、彼女が薄目を開けた。
「起きたの?百合……え…」
驚いた。
彼女は少しもためらいなくボクの指に自分の指を絡め、頬に擦り寄せた。
手の甲に当たる頬が、ふにゃりと微笑む唇が、ボクを欲情させる。
「…ほんとに寝てるの…?」
聞こえるのは寝息だけ。本当に寝ているらしい。
無意識にボクに甘えてくるとか……可愛すぎでしょ……。
ボクは起こさないように彼女の上に跨った。
「ボクを煽ったキミが悪いんだからね……」
悪いけど、もう止まれないから。