第12章 毒をもって毒を制す
『ど、どうしてお前が……っ!」
『あーら、よくあるお決まりのパターンでしょー?仲間だと思ってた相手に裏切られるって』
『よくも、裏切ってくれたな!!』
『だってぇ、お仲間ごっこって楽しくないんだもん。だからさぁ、今から私と遊びましょ?血にまみれたさいっっこうに興奮する命を賭けたゲームでね!!』
「はい!カーァット!!」
「ふぅ………お疲れ様です、監督」
「お疲れ!今回もいい感じだよ!」
「ありがとうございます」
このドラマの撮影もあとちょっとかぁ。
血に狂った快楽殺人犯って演じるの疲れる……。
でも、後もうちょっとで大和に会える。
「じゃあ、お先に失礼します」
「お?東雲さん今日早いね」
「ええ、この後予定がありまして」
「もしかして、彼氏?」
「やぁだ。そんなんじゃありませんよ。二階堂さんと次の回の打ち合わせがあるんです」
「ああ、そういうことか」
「はい。では、失礼します」
「おつかれー」
………女優やっててよかったかも。
彼氏?って聞かれて一瞬ドキッとした。
多分今の嘘もばれてないとは思うけど、やり辛い業界だなぁ。
私流上手く嘘をつくポイントは、本当のことも混ぜて嘘をつくこと。こうすれば大体ばれない。
チラリと腕時計を見る。
大和と会うまでまだ時間があるわ。
少し髪型整えてから行こうかしら……。
ガチャ
「ただいまー……って、うわぁぁ!?」
「あら、大和。どうしたの?そんなに大きな声を出して」
「い、いや、だって」
「まるで約束をすっぽかした彼女が目の前にいる、みたいな反応をしてるわよ」
「……すみません」
私は今、アイナナ寮のリビングのソファの上にいる。
大和とはちゃんと約束をしていたのに……。
「私は愛しい彼氏のためにしたいこと全てほったらかして来たというのに、あなたはメンバーと楽しくディナーかしら?随分と御身分がお高くいらっしゃるのね」
大和は何も返せないのか黙っている。
「大和、こっちへいらっしゃい」
「………」
大和は黙ったまま近づいてきた。
私は大和の顔をおもむろに掴み深くキスをした。
「んっ!?」
「ん……ふ、ん……はっ……」
目の前には目をまぁるくした大和、側には顔を真っ赤にしているアイナナのメンバー。
気分がいいわ。
私は大和の腕を引き、玄関へ連行した。
「悪いけど、大和借りるわね」
「「「は、い……!」」」