• テキストサイズ

12色のアイ

第1章 ヤキモチにはご用心


「なんで!?どうしてため息つくの!?」と、聞きたい衝動を抑えてそっと天くんの顔を見た。
…明らかに機嫌が悪い。
今日はそこまで気温が低くないのに真冬のような空気が漂っている。
プロ意識の高い天くんからすれば、きっと私はモデルとしてまだまだ幼いんだろう。
…これは2時間正座でお説教コースだなぁ……。
とりあえず、先のことを心配しても仕方がない。
今は、天くんの機嫌の悪さを直さなければならない。
「て、天くん…?」
「……」
応答なし。これは非常にまずい。
「あ、の…やっぱり私はまだまだプロのモデルなんて言えないよね。も、もっと頑張るから!だから、その……」
怒らないでください。
そう言おうとした時、天くんがあるページを開いてこっちに向けてきた。
これは…私の一番自信のある写真だ。
「この写真撮る時、カメラマンになんて言われた?」
「なんて言われた…?」
「アドバイスとか。こんなイメージでとか」
「あ、えっと…『世の中の男性を虜にする夜の蝶、のイメージで』って言われたけど……」
写真の中の私は、薄暗い部屋の中、ベッドの上でネグリジェ姿で微笑んでいる。
イメージには合った表情とポーズができていると思うけど…天くんはどう思ってるんだろう。
「あ、の……ごめんなさい」
気づくと私は天くんに向かって謝っていた。
「どうして謝るの?何か心当たりでもあるの?」
「え、いや、私はないけど……天くんが見て、その写真は良くなかったんでしょ?」
天くんから返ってくる言葉が怖くて下を向いていると、上からさっきよりは柔らかくなった声が聞こえてきた。
「そんなこと言ってないでしょ。ボクがいつこの写真の出来が悪いって言った?」
返ってきたのは思いがけない言葉だった。
「え?そ、そうなの・・・?」
「うん。前と比べたら表情の作り方も上手くなってるし、テーマに合った雰囲気が出せてる。かなり良くなったよ」
「ほんと…?」
「ボクが嘘つくと思う?」
「ううん。思わない…けど、さっきまで怒ってなかった?」
私がそう聞くと空気が一気に張り詰めた。
……どうやらこれは聞いてはいけなかったらしい。
天くんはまた黙ってしまった。

そして、今に至る。
/ 215ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp