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12色のアイ

第5章 子犬の衣を借る狼さん


「陸……なんだか今日はいつもより落ち着きがないけど、何かあった?」
「何にもないよ!大丈夫」
陸は首をぶんぶん振って否定した。
「そう?ならいいけど」
「ね!それよりドーナツ、早くっ!」
「ふふ。はぁーい」
食器棚から二枚のお皿を出してドーナツを二つずつ乗せる。
その後、フォークとナイフを出しに行くと陸はすでに手掴みで食べていた。
「んー!おいひいー」
「ドーナツ、久し振りに食べたけどおいしーねー」
二人で美味しい、美味しいと言いながらドーナツを食べていく。
お皿の上にあったたくさんのドーナツがあっという間に半分に減った。
「陸、どう?最近の仕事は」
「楽しいよ!ファンのみんなの笑顔を見るとオレも頑張ろーって思えるんだ」
「私もIDOLiSH7のコンサート行ったよ」
「え!?ど、どうだった?」
「最高。特に私の推しがね」
「推し……って……」
陸が不安そうな目でこちらを見てくる。
「可愛い……じゃなくて、もちろん陸に決まってるでしょ」
「よかったぁ、安心したよ」
「コンサートでも陸はすごい可愛かった。満面の笑みでこっちに手振ってる時なんて、天使が降臨したのかと思うほど可愛かった」
私はドーナツを食べながらコンサートでの陸の可愛さを語った。
陸と二人の時間が取れたのが久し振りなせいか、「可愛い」と言う単語が止まらなかった。
「私的には『Fly away』の時の陸が一番可愛くて…陸?」
気づくと陸の手が止まっている。
発作でも起きてしまったのかと思って体を近づけると、顔を掴まれキスをされた。
陸の唇の感触、匂い、体温、全てが久し振りで心臓の鼓動が早くなっていくのを感じた。
「ん、はぁ……り、く……?」
「お、オレだって………」
陸の鼻と私の鼻がくっつく。
どちらかが少しでも動けば唇が触れてしまう距離だ。
「オレだって男なんだよ?可愛いも嬉しいけど、好きな人にはかっこいいって言われたい」
いつもの可愛らしい笑顔の陸とは違う真剣な顔。
ドキン、と胸がときめいた。
「ぁ……ご、ごめん。悪気は無かったの……」
息と息が触れ合い、視線と視線が絡む。
目をそらしたくてもなぜだかそらせない。
「知ってる」
私がほっとしたのもつかの間、陸の口から衝撃的な言葉が飛び出してきた。
「大丈夫、今からオレが満足するくらいかっこいいって言ってもらうから」
……嫌な予感がする。
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