第26章 今日から夫婦になります
「うっそだろ……?」
東雲百合、25歳。
彼氏に誕生日を祝ってもらえることが楽しみすぎてあまり眠れませんでした。
「…………小学生か!!!!」
いやいやいやいや。
今までも彼氏に祝ってもらうことはあった。
あったけども。
こんなにっ…こんなに、わ、わくわく(小声)するなんて…。
「私、千のこと好きすぎ…?」
ブンブンッと頭を振って邪念を強制的に吹っ飛ばす。
とりあえず支度しよう。
今日の為に用意した若草色の上品なワンピース。
お化粧は控えめに。唇には『キスしたくなる唇』になると話題のリップグロスを。
千から貰った桜のパレッタを使って、髪はハーフアップに。
唇と同じピンク色の石のついたネックレスをつけ、ワンピースよりは少し濃い色の緑の靴を履く。ヒールがちょうどいい高さで気に入っている。
鏡を見て全身をくまなく確認する。
「……千、かわいいって言ってくれるかなぁ」
自然に口から飛び出た言葉に驚く。
少し赤くなった頬をぱたぱたと手で仰いでから、外に出る。
……やっぱり私は千のことが大好きらしい。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
予定時間ぴったりに千の家に着いた。
「あ、いい匂いがする」
「お昼ご飯、まだでしょ?」
「うん。わざわざ作ってくれたんだ。ありがとう」
「肉や魚は無いけど我慢して食べて」
「ふふ、我慢なんて。私もベジタリアンなこと知ってるでしょ?」
「そうだったっけ」
「わざとらしいの!」
こんなくだらない、些細な会話に幸せを感じる。
付き合って少ししか経ってないのに、まるで幼なじみだったかのような安心感。
細いけど私より広い背中に抱きつく。
「料理の続きができないんだけど?」
「今全身で幸せを表現してるから諦めて」
「よし、できた。お皿運んで」
「抱きつかれながらも料理できちゃう千ハイスペック。好き」
「モモみたいだ」
「百くんといつもイチャイチャしてるもんね。私との会話夫婦漫才のネタに使わないでよ?」
「もう使った」
「うそっ」
「うそ」
「もー!」
あーー、幸せ。
私の顔面、放送できないくらい緩んでるわ。
その緩んだ顔をなんとか元に戻して千のご飯を食べる。
白いご飯に色とりどりのお料理たち。
美味しすぎてまた顔が緩みまくったなんて、言うまでも無い。