第22章 一生に一度の大切な日
「おめでとうー!!」
「お幸せにー!!!」
あちこちから飛び交う祝福の声。
チラリ、と隣を見ると、微笑みかえしてくれた。
幸せすぎて頬が緩む。
今日、私は八乙女 百合になります。
「いやいや、おめでとうさん。まさかあの八乙女が結婚するとはな…」
「ありがとうな、二階堂」
「綺麗な嫁貰っちゃって幸せだなぁ」
「おう。俺は地球で一番幸せな男だぜ」
ぐっと肩を寄せられる。
私を貰って幸せ。
その言葉だけで生きていけそうなほど嬉しい。
「八乙女のことよろしくな」
「は、はいっ」
じゃーなー、とひらひら手を振りながら去っていく二階堂さん。
「あいつ、なかなか面白い奴だろ?」
「はい。楽さんのお友達はみんな素敵な人ですね」
「……」
「?楽さん?」
「旦那の前で他の男を褒めるのは焼けるな」
「だ、だって、もとはといえば楽さんが…!」
「ははっ、冗談だ」
「もう……」
呆れたように息を漏らすと、さりげなく手を繋がれた。
指が絡む。
それだけで心臓がキュッと鳴った。
「安心しろ。お前の言う通り俺の友人たちはいい奴ばかりだ。だから、緊張するな」
「…バレてましたか」
「俺の嫁のことだからな」
気遣いが嬉しくて楽さんの腕に擦り寄る。
今日の結婚式は関係者とお互いの家族しか呼んでいない。
楽さんのお父様とお母様には会ったことがあったけれど、IDOLiSH7やRe:vale、九条さんと十さんにはあまり面識がなかった。
だからこんなに顔を合わせたのはこの式が初めてだ。
「東雲さん」
後ろから声がかかる。
「もう東雲じゃねぇよ」
「ふふ。そうだね。じゃあ百合さん」
「は、い。今日は、来てくださってありがとうございます。九条さん、十さん」
「うちの八乙女Jr.が迷惑かけてるだろうと思ったからそのお詫びにね」
「おい」
「こら、天。二人ともおめでとう」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
「ありがとな」
「楽、結婚できてよかったね」
「これでもうボクたちの前でグダグタ言う必要ないね」
「え?」
「おい、天」
「あなたの旦那さん、暇さえあればあなたのこと、」
楽さんが九条さんの口を手で塞ぐ。
「これ以上はダメだ」
「…気になります」
「恥ずかしいから秘密だ」
「…どうしてもですか」
「どうしてもだ」
ちょっと染まった頬が可愛くてくすりと笑ってしまった。