第15章 誰にする?(フラウェver)
「勝敗がつかないのは困るので、一つ提案があるのですが」
「ん?なになに?」
「愛してると言う相手を貴方に変えませんか?」
んーーー????
お姉さんちょっと何言ってるか分かんないよーー??
「つまり…」
「百合に愛してるって言って、百合を照れさせた方が勝ちってことでしょ?」
「そうですけど…割り込んで来ないでくださいよ……」
一織は「全く七瀬さんは……」とかってブツブツ言ってるけど、そんなことより、やばい。
2人ともアイドルしてるだけあって顔がいい。
そんなのに「愛してる」なんて言われたら心臓がもたない。
………よし、逃げよう。
私はドアに向かってダッシュしようとしたけど、時すでに遅し。
いつのまにか、私の体は陸の胸の中にすっぽりと収まっていた。
後ろから耳に熱い息がかかり、「ヒッ……」と小さく悲鳴が漏れた。
「百合、愛してるよ」
肌に唇がギリギリ触れない距離で呟かれる。
その声の生々しさに震えていると、腕を強く引かれ今度は一織に前から抱きしめられた。
「百合さん、愛してますよ」
目の前には真剣な一織の顔。
私は一織の胸を押して目を逸らした。
「こ、んなゲームに、そんな真剣になってどうすんのよ……」
そう言うと、顔を無理矢理持ち上げられ一織と視線が絡み合った。
「一応言っておきますけど、本心ですから。私は嘘は吐きません」
「う、そだぁ……」
「嘘じゃないよ。百合」
陸の声がしたかと思うと、後ろから腰に手が回された。
前は一織、後は陸。
そんな贅沢なサンドイッチ状態になってしまった。
「やだ、も、離れなさいよっ……」
「だーめ。まだどっちにするか決めてもらってない」
「そうですよ。貴方が言い始めた事なんですから、ちゃんと責任取ってくださいね」
「……っ……こんなの、私の知ってる『愛してるゲーム』じゃないっ……」
「まぁ、細かい事はいいじゃないですか。ほら、こっちに集中して……」
左の耳元で一織が「愛してます」と囁く。
「一織ばっかずるい……」
右の耳元で陸が「愛してる」と囁く。
どちらの囁きも私には甘すぎて、もうキャパオーバー。
こんなに甘い声で言われると、このまま2人に愛され続けたくなる。
……すでにケーキやドーナツの存在は私の中から忘れ去られていた。
勝者:引き分け