第5章 1週間後にもう一度
「でもな、桃浜。もし…。もしも、冷静になってみて考えて…例えば1週間後、1ヶ月後とかでも、まだオレを好きでいてくれたなら…」
私は悲しみで閉じかけた目を伊豆くんに向けた。見たこともないほど顔を真っ赤にした伊豆くんが目の前にいた。
「その時、もう一度オレに話しかけてくれないか。薬のせいなんかじゃない、お前自身の言葉で好きって言ってくれないか。そうしたらオレはきっと本当に嬉しくて、オレもお前のことを好きでいていいんだって、そう思えるからさ…」
泣き出しそうな顔を無理矢理笑顔にして、伊豆くんはそう言った。
私は今度こそ顔をぐしゃぐしゃにして泣いてしまった。
伊豆くんは全部わかっているんだ。
もし今ここで彼と付き合ったとしたら、私はきっと後で自分を責めてしまう。私のワガママに伊豆くんを巻き込んだ、伊豆くんの優しさにつけ込んだ、って責めてしまう。それをわかっているんだ。
涙を止められない私に、伊豆くんはハンカチを渡してくれた。
ああ、あまりにも優しい伊豆くん。伊豆くんの言うとおり、しっかり落ち着いて考えよう。
そして1週間後には、きっときっと自信を持って、もう一度彼に告白しに行こう。
伊豆くんと同じ優しい匂いのするハンカチを握りしめて、私はそう決めたのだった。
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おわり(次ページ後書き)