第5章 Shake it !
【潤side】
ズルい!
今は俺の1週間なのにっ…!
会議室を何度かノックすると、ガチャリと鍵の開く音がして。
大野さんがバツの悪そうな顔で、扉の向こうから現れた。
それを睨み付けながら会議室へ押し入ると、翔さんは壁際で呆然と立ってた。
ホンノリ桜色に染まった頬で。
「電話、どこから?」
「そんなの嘘です」
「はぁっ…!?」
「それより、なにしてたんですか?こんなとこで」
「べ、別に…」
サッと視線を逸らされた。
また大野さんを見ると、悔しそうに唇を噛んでる。
「…ルール違反、だよね?」
俺の言葉には、返答なし。
「あんたがそんなことするならさ…来週のあんたの順番のとき、俺が邪魔してもいいってことだよね?」
「それはっ…」
「それとも、来週なしにしよっか?ペナルティってことで」
「ちょっと待て!」
睨み合う俺たちの間に割って入ったのは、なぜか翔さんで。
「翔さんは、黙っててください。これは、俺と大野さんの問題なんで」
そう言って押し退けようとしたけど、翔さんは真っ直ぐ俺を見つめたまま、俺と大野さんの間を動こうとはしない。
「黙ってるわけにいかないだろ。俺の問題なんだから」
「違うよ。翔さんは、関係ない」
「関係なくない!なんで、いつも勝手に決めるんだよ!おまえ達、俺を好きだなんて言いながら、俺の意志なんてまるで無視じゃないか!」
怒った翔さんの言葉が、グサリと俺を突き刺した。
「いつまでも俺のこと無視するんなら…俺はおまえらの中の誰とも付き合わない」
「「「「ええ~っ!?」」」」
俺と大野さんの声が、ハモる。
……ん?
なんか、ドアの外からも聞こえたような……
「…今週は、潤と付き合う。で、来週は智くんと過ごす。それでいいだろ?文句あるか?」
腕組みして、威圧感たっぷりに話す翔さんは、いつの間にか櫻井課長に戻ってしまってて。
「「は~い…」」
俺たちは頷くしかなかった。
「それから、もう会社ではこういうことはしない。今度やったら、次こそ俺は降りるぞ?」
「「それは困るっ!」」
やっぱり、ハモって。
眉間に皺を寄せて怒ってたはずの翔さんは、ぶーっと噴き出した。
「なんだよ~、何気に息ぴったりだな、おまえ達」
ケラケラと笑い出した翔さんを、俺と大野さんは呆然と見ていた。
やっぱ敵わねぇな~、この人には。