第4章 夢
【翔side】
雅紀との約束の一週間が終わった。
「翔さん!俺のこと忘れないでよ!!」
「...うん..」
涙目の彼を見ていたら、うっかり情に流されそうになったけど、それじゃあ、やっぱダメ...だよな..
就業時間を過ぎても、変わらずパソコンを睨んでいると、背後に誰かの気配を感じて振り返った。
「二宮...」
「な~んだ、エッチなゲームの監修してるのかと思いました~、ざ~んねん♪」
「残念って...」
「翔さん、帰りましょ?今夜から、俺ですよね♪」
「ちょっ///そんな露骨に...」
俺は慌てて周りを見回した。
人に聞かれたらどうするんだよ、全く///
「ふふっ、大丈夫ですよ~。何のことか分からないですから..」
妙に余裕な彼に押されっぱなしの感は否めないが、俺は言われるままに、電源を落として帰り支度をした。
「飲みにでも行くか?」
まあ、取りあえずは普通に始めようかと、そう思った俺に、二宮は、
「まっすぐ帰りましょ?翔さん家に行きますか?」
「えっ?」
俺は、性懲りもなくまた、周囲を気にしてキョロキョロした。
...まあ、家に来るくらい、何でもないか。
意識しすぎてる自分に、溜息が出た。
...何やってんだよ、俺...
落ち着きはらった彼のペースで、俺達は駅前のスーパーで酒のつまみを買って、俺のマンションに帰ってきた。
「散らかってるけど...」
「全然平気です!なんなら俺が片付けてやりますよ~?俺、唯一得意な家事が、掃除ですから~♪」
二人で並んでエレベーターに乗ったら、突然二宮が、手を繋いできた。
「ちょっ、な、な、何すんだよ..」
「誰もいないじゃないですか~?それから、俺の事、これからはニノ、って呼んでくださいね❤」
.....やっぱ、こいつに振り回されてる。
さりげなくハート❤なんか着けやがって!
智くんや雅紀とは違ったタイプの彼に、俺はいいようにあしらわれてる気がする。
でもさ。
不思議とそれが嫌じゃないんだ...
ニノの不思議な魅力に、早くも惹かれ始めている自分...
鍵を開けようともたもたしていると、
「手を離せばいいんじゃないですか?」
そう言ってニノはクスクス笑い、手を離した。
それをほんの少しだけ淋しいと思った俺は、慌てて首を振った。
ニノはそんな俺を見て、また口元を隠して笑った。