第7章 まだ見ぬ世界へ
【翔side】
「しょおくん…俺…俺ね…」
ベッドの布団の中。見つめ合う俺たち。
彼の目には、今にも溢れ落ちそうな涙が揺れている。
言いたいことは、分かってる。
言いたいけど、言えない気持ちも…
今夜で智くんとの一週間が終わる。
俺が別の誰かを選んだら、智くんとこんな風に会うこともなくなる。
『自分に決めて欲しい』
そう言いたいけど、それはフェアじゃないから言えないでいるんだ。
普段はそうでもないくせに、そんなところは真面目で律儀なんだね(^^;
「もう寝よっか」
「…うん…あ、やっぱ寝ないかなぁ…」
「何でだよ~?もう、腰立たないんですけど~?」
揶揄かうようにそう笑うと、彼は、
「違うよ…もしかしたら…こうやって一緒に寝ることも無くなっちゃうのかなぁ…って…
そう思ったら、寝ちゃうの勿体なくて…
ずーっと、翔くんの顔、見ていたいなって」
「止めろよ~俺が寝れないだろ~?」
「だって!」
「いいから…おいで…」
腕を伸ばすと智くんはその中に抱きついてきた。
…何か、可愛いな…
良い年したおじさんなのにな…
「…翔くん…大好きだよ…」
「うん…ありがとね…」
「翔くんがもしも、もしもね?
俺じゃない誰かを選んでも…俺…ずっと、翔くんだけを好きでいるから…」
「ははは、何か、すげ~重いヤツじゃん」
「そうだよ!俺の気持ちは、あいつらの誰よりも強くて重いんだ…」
あのさ…そう言うの、普通は引くぜ?
黙って髪を撫でてやると、
智くんは、猫みたいにすり寄ってきた。
……こういうとこ、嫌いじゃない…
なんなら、重過ぎる気持ちも。
智くんとこんな関係になる前は、彼の仕事振りにイラッとしたこともあった…
でも、彼の持つ不思議な空気感とか、優しい雰囲気とかに癒しを貰っていたのも事実な訳で。
仕事が上手くいかない時も、彼と飲みに行き、愚痴ったりして…
そんな時、
「大丈夫だって。翔くんが思う通りにやれば、きっといい方に行くって!俺はそう信じてる…」
そうにっこりされると、肩の力がスーッと抜けていく感じなんだ。
だったら俺は、彼一人に決めるのか?
ニノと雅紀と潤の顔を思い浮かべて、
俺はそっと目を閉じた。
……どうしよう……ホントに…
気が付くと智くんはすやすや寝息を立てていた。
「なんだよ…寝てんじゃん…」