第27章 甘くて苦い。
「綾菜はさ、俺にチョコとかくれんの?」
「なんのために?」
「バレンタイン」
バレンタイン一週間前、突然光太郎に言われた言葉に、私は焦ることになった。
「光太郎、やばい、なんも考えてないよ」
「お前、忘れてたんかー…。俺はいいとして、黒尾どーすんの?」
そうだよ、光太郎はいいとして、クロはどうしよう…。
「やっぱり、手作りの方がいいよね…?」
「俺は食えるならなんでもいいけど?」
…光太郎はダメだ、当てにならない。
でも、やっぱり手作りの方が男子は喜ぶよね?
だとしても、ワタシ、リョウリ、デキナイ。
…どうすればいいんだ…。と、悩んでいてもいい案は浮かばず、学校に向かう時間になってしまった。
「いってらっしゃい」
「行ってきます。」
光太郎はもう自由登校になっているようで、いつもゆっくりとした朝を過ごしている。
呑気でいいなぁーとか思いつつ、私は研磨との待ち合わせ場所まで向かった。