第9章 ♡甘い蜜には毒がある
ーーーーーーーーーーー
『はぁ...はぁ、はぁ......めるちゃん...』
「......っ!...」
荒い息のまま、
ぎゅーっと花臣に抱き寄せられる。
『......はぁ...はぁ.........』
「...は、はなおみ...さ...」
『僕は......なのかな...』
彼が本当に小さい声で、ぽつりと呟いた。
「え.........」
『.........本当はわかってる。
こんなの...こんなのは......』
ぎゅっと、めるを抱く花臣の腕が強まる。
「......花臣、さん...」
『............ねぇ、もし...もしね......
僕が物語の主人公だったら...
君は僕の運命の人で、僕の未来のお嫁さんなの。
......それで...それでね、
最後はきっとハッピーエンドで、
僕達は...きっと2人で幸せに暮らすんだ。』
「............」
『でも......でもさ...』
悲しげに眉を寄せ、
花臣はめるの身体に顔を埋める。
『めるちゃんが物語の主人公だったら......
きっと僕は.........僕は、ただの悪者で...
きっと君は...ほかの誰かと、幸せを手に入れる。
君にとってはハッピーエンドで、
でも、悪者にとっては...悪者の、僕にとっては...その物語はバッドエンドだ。』
「...っ......」
『僕にとっては運命の相手でも、
きっと...君にとっては、ただの......』
「花臣さん」
少し震える、
いつもよりさらに小さく見えるその頭を
めるはゆっくりと優しく撫でる。
『...っ、める...ちゃん、
......僕、は...君に...』
泣きそうなその声に、
なぜかめるも泣きそうになりながら
優しく言葉を紡ぐ。
「...ねぇ花臣さん、知ってますか?
物語の主人公って、1人じゃないんですよ。」
『...え......』
少しだけ、彼の腕が緩んだ。