第9章 ♡甘い蜜には毒がある
「はぁ......」
(ど...どう育ったら
あんなに純粋な男の子になるんだろう...)
ーあのあと結局、
“好き”という言葉だけを残し、
“続きはまた勉強してくるから待ってて!”
と、耳まで真っ赤にした羊は
逃げるように仕事を再開してしまった。
結局どうするのが正解なのか分からなかっためるは
そんな羊を尻目に
1人、その場を後にしたのだった。
「勉強って...もしかしてまた、
少女漫画から調べてくるのかな......」
少女漫画を必死に調べる羊の姿を想像してしまい、
思わず、めるはくすりと頬を緩める。
(...まぁでも......そのあと、なんて...
お付き合いするかしないか...
なんてことになるくらいだし...
いっそそれなら.........)
「このまま、その先を知らない羊さんでいてくれた方がいいのかもしれない...」
めるは少し悲しげに睫毛を揺らす。
(どうせ今のこの状況で
誰かとお付き合い...なんて、
不誠実なことはできないし...
それに、相手があの羊さんとなると
余計にそんなひどいことはできない......)
(でも、もしも......
もしも、この状況から抜け出せて
その時に、羊さんの気持ちが変わっていなければ......)
そんなことを無意識に考え、
めるは、はっと目を瞬かせる。
「............わ、たし...何考えてるんだろう.........っ、や、やめやめっ!
と、とりあえず仕事しなきゃ...!」
先ほどの羊のように、
真っ赤になった顔をぶんぶんと左右に振り
めるはパタパタと廊下を駆けていった。
ーーーーーー“その時”、羊さんの気持ちが変わっていなければ......
きっとその答えは......
今はまだ、気づいてはいけないものだから。