第8章 ♡その想いは甘く優しく、そして我が儘で
「私は今、好きな人なんていませんし、
そもそも、こんな状況で作れるわけがありません。
だから本当にそういう問題ではなくて...!」
『そうなの?
...それじゃあ、何が問題なの?』
「え.........」
凌にそう問われた時、
めるはほんの一瞬だけ2人の顔が浮かび、
自分の中でよぎった気持ちに眉を寄せた。
ー花臣さんは、私がいなくなったら
どうなってしまうのだろうか。
ーここから離れしまったら、
もう羊さんには会えなくなってしまうのだろうか。
そんなことを考えて
何も言えなくなっためるを見ると、
凌は何かを察したように肩を落とした。
『.........なんとなく分かったよ。
好き嫌いは置いておいても、
とりあえず今の段階では
僕では君に役不足ってわけだ』
「え......そ、そんなわけでは...!」
凌の少し拗ねたようなその声に
めるが慌てて否定をすると、
彼はすぐに柔らかい笑みをつくり
めるのことを抱き寄せる。
「...っ......あ、あの...」
『ふふっ、そんな必死に否定しなくても大丈夫だよ。まぁ、そもそも少なくとも3対1で分が悪いし.........それに...やっぱり、“恋愛ゴト”はこうでなくちゃ』
「え......どういう...」
めるが不思議そうにそう尋ねると
凌はゆっくりとめるの身体を離し、
対面する形になるように顔をむける。
『......ふふっ、やっぱり...
君はいつ見ても可愛いな』
「...な、なんですか......急に...」
『あ、言っておくけど、
今のこの言葉は僕がいつも色んな女の子相手に言ってる“ご挨拶”とは別ものだから。』
「...?......だから、よく意味が...」
『...つまり』
ぐいっと急に顔を引き寄せられ、
めるの唇が、凌のそれに重ねられる。
「...ん!んんん!」
『ちゅっ、ちゅう、ちゅ......は、あ...』
そのまま優しいキスをして
ゆっくりとそれを解放すると
凌はにやりと妖しく笑った。
『君のことはなんとしてでも
僕が奪い取ってみせる...ってこと。
.........お分かりですか?囚われのプリンセス』