第8章 ♡その想いは甘く優しく、そして我が儘で
『あ!そういえば...!
めるちゃんのこと、はなが呼んでたよ!』
「え......?」
月臣が帰ってきたその次の日、
仕事を終えて部屋に戻ろうとしていためるに
羊が後ろから声を掛ける。
「...花臣さんが、ですか?」
『そうそう!
“お仕事終わったら僕の部屋に来て“って
めるちゃんに伝えといてー!って
伝言を預かってたんだ!......ん、あれ?』
「?どうしました?」
『あ!いや!
...とにかく、はなが呼んでたから、
めるちゃんがよかったら行ってあげて』
「あ、はい...!わかりました」
『...あーと、大丈夫?
部屋の場所、とか、わかる?』
羊が心配そうに首を傾ける。
「ご心配ありがとうございます...!
以前羊さんから頂いたお屋敷の地図を
見ながらなら......行けると思います。」
めるがにこっと微笑み返すと
羊はさらにうーん、と首を傾ける。
『ん...そっか......あれ?...んー......』
「どうかされましたか?」
めるのその不思議そうな声に、
慌てて羊は、ぱっと顔をあげる。
『あ!ううん!なんでもない!
なんでもないよ!』
「.........?
なにかあったら、
私でよければ言ってくださいね。」
『う、うん!大丈夫!
めるちゃん、ありがとうね!!」
「い、いえ...!
それでは...えと、行ってきます」
『うん!行ってらっしゃい!』
いつもより妙に歯切れの悪い羊に
疑問を感じつつ
めるはその場を後にした。
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その後、1人残された羊は
さらにうーん...と首を傾ける。
「なんだろう...なんか......。
......なんだか、
めるちゃんとはなが仲良くしてると......」
(胸がもやもや?ズキズキ?
するんだよなぁ…?)
「.........」
羊は無意識に、
胸を手でぎゅーっと抑える。
「.........やっぱ...なんか、苦しい...かも?
......なんだろ、これ?」
暫く胸に手を当てたり、はずしたり、
深呼吸してみたり......
そのまま1人、
胸の違和感と戦うのだった。