第5章 この灯火が消えるまで[平和島静雄]
そして生きる覚悟を新たに、手術を受けつらい闘病を経てやっと退院出来た。
「いやー、長かったですねぇ」
「そうだな。…粟楠会、行くんだろ?」
「はい。退院の報告と、これからのことも話さなくちゃ…」
今回のことで多くの人たちに迷惑をかけてしまった。特に静雄さんと粟楠会。
「荷物持つぞ」
「ありがとうございます」
片手に持っていたバッグを静雄さんに持ってもらい、空いた方の手はどちらからともなく繋がれる。
「生きてるんですね私」
「ああ。ちゃんと俺の隣にいる」
「あの日、静雄さんが来てくれなかったらきっと私は既にこの世界から消えていたんでしょうね」
「俺自身、あの時は必死だった気がするんだよな。このまま会わなかったら何もかも手遅れになる気がしてた」
「そっか」
ねぇ神様。人はいつか死ぬ。それは遅いか早いかの違いでしかないけれど、1度消えかけたこの命が…せめて、この灯火が消えるまでは見守っててください。
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