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【名探偵コナン】幼女になりました。

第3章 すたーと


「降谷さん!」
「どうした」
「アパートですが、備え付けの家具以外のものは無くなっていました。それと、ごみ捨て場にこれが」

暫くしてバタバタと慌ただしく入ってきた部下の手には、物がない室内の写真と、ゴミ袋に入れられた葵の日用品や衣類が写された写真があった。そのどれもが子供が使うとは思えないもので愕然とした。
母親は最初から冷静だったということだ。本気で葵を捨てたのだ。その事実に湧き上がる怒りをなんとか鎮め、くしゃりと髪を掻き上げ深く息を吐いた。
ここで俺達が動くわけにはいかない。

「絢瀬葵の母親を保護責任者遺棄で確保するように流せ」
「はい」

公衆電話でも使う為だろう、小さくなる部下の背中を眺めながら葵には言えそうにないと、あの小さな陽だまりを思い出し天を仰いだ。

「降谷さん…」
「彼女の親権を安室透にしておいてくれ」

わかりました。と部屋から出ていく風見を視界から外し、書類に取り掛かる。明日はポアロだ、葵のことはまだ誰にも伝える気はない為、休むことはできない。
明後日には今書斎として使っている部屋に葵の家具を買いに行こう。あのマンションは安室透のセーフハウスの中でもセキュリティの高いところだ、問題はない。
衣類もある程度買っておいた方がいいだろう。あれこれ買うものを纏めながらも書類を進めていく。

日が傾きかけた頃、降谷の空になったカップに珈琲を注ぎ戻ってきた風見は、デスクにころんと何かを置いた。

「降谷さん、親権は問題なく安室透預かりになりました。それと理事官がこれを。GPSが内蔵されているらしく、葵ちゃんの携帯のストラップに使ってくれとの事です」
「………」
「降谷さん?」

ストラップを見て静止した降谷は、徐に片手で顔を覆った。
そうだ。日用品や家具、衣類ばかり考えていたがあの子にはこれも必要だった。

「……携帯買ってない」

無心で書類の半分を終わらせ、時間ギリギリで携帯を購入。一度帰宅し、葵にストラップを付けた携帯を渡してとんぼ返り。
途中の自販機で缶珈琲を買い、ひと息ついたあと残りの書類に手を付け始めた。





すたーとFin.
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