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涙はとうに枯れてしまった【NARUTO】

第2章 残暑| ネジ


幾分弱くなったとはいえ、斜陽は昼間の強さの面影を残していた。目に直射するのを避け、自然と伏し目がちになる。歩みを進めるたびに、焼けた大地から熱を感じる。じっとりと身体中から汗をかいた。不快な感覚だ。

陽炎の向こうに見知った人を見かけた。あちらも、こちらに気づいたようで、会釈をしている。
「こんにちは、ネジ上忍。」
彼女の澄んだ声が聞こえる。俺もあいさつを返した。
山上ナチは以前で共に働いたことがあったが、それ以来、顔を合わせると、彼女の方から親しげに話しかけてきた。
「これから任務の報告に行くんです。」
彼女は、目を細めてきれいに笑う。
「私もだ。」
早足の彼女と歩く時には、速度を落とす必要がないが、何となくゆっくり足を運ぶ。彼女も俺に合わせて隣の、少し後ろをついてくる。

今年の夏は厳しいだとか、こう雨が降らないと水不足が心配だ、とか、他愛もない世間話をしている間も、彼女は汗をかいていなかった。それどころか、涼しそうにさえ見えた。暑い暑いと口に出しても、嘘のように感じられる。一体どんな修行をしているのか、聞いてみようか。

「これだけ暑いと、夕涼みにもなりませんね。」

振り向くと彼女の白い肌に夕焼けの赤い光が反射して眩しかった。よく見えなくても、きっと微笑んでいる。
「全くだ。」
ふっと、小さく笑うと肩の力が一気に抜けていった。仕事の緊張がまだ解けていなかったらしい。俺は無駄話は嫌いだが、彼女の声を聞いているのは心地よく感じられた。

風が吹いた。
相変わらずなまぬるかったが、幽かに涼しく感じられた。
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