• テキストサイズ

涙はとうに枯れてしまった【NARUTO】

第9章 初雪| ネジ


「あっ、雪。」

朝の鍛錬を終えると徐々に太陽が昇り、辺りの輪郭をはっきりと浮かび上がらせる。
日の出とともに少しずつ大気は暖かくなっていたが、今日は一向に気温が上がる気配がなかった。

テンテンの声に促されて俺は天を見上げると、重く垂れ込めた鈍色の雲から、はらはらと純白の花びらのような雪が舞っていた。

そういえば、朝晩の冷え込みが厳しくなり、昨日からは肌を刺すようなものに変化していたことに気づく。

「初雪か。」

手の中に落ちた雪は温度を奪う間も無く一瞬で溶けた。
久しく彼女の姿は見ていない。里外の任務だろうか。彼女とはいつどこで何をしているか連絡を取り合うほどの仲ではない。もちろん、どこに住んでいるかなんて知る由もなかった。ただ、彼女の笑顔を見ていないことはなんとなく寂しい気がした。

きっと彼女であれば舞い散る雪を見て、美しい、とあの涼しく澄んだ声で言うのだろう。そう想像すると、彼女には太陽の光が降り注ぐ夏より、ふわふわと雪の舞っている景色の方が似合っていると思う。
今頃何をしているのだろう。目を閉じると彼女に会えるだろうか。もう一度空を見上げ、想いを馳せていると、リーが遠くで、大きくくしゃみをした。



テンテンは思った。この男は恋をしている。

花が咲いたと笑い、雨が降っては憂い、葉が色づくと物思いに耽り、そして今雪を見て微笑んでいる。

この男が恋をするなんて、どういう風の吹きまわしか。色恋沙汰に最も遠いこの男が。まあ、宗家だの分家だのしきたりにしがみついているこの一族の男に想われるなんて、相手の女は不幸だ。何を嬉しそうな顔をしているのか。
包み込んでいた優しい空気が、いきなり壊れ、ネジはくしゃみをしたリーをあからさまに睨みつける。
ああ、また始まったよ。これから子供じみた争いが始まると思うとうんざりした。この男の想い人が誰だろうと、自分とは関係ないという結論に行き着くと急速に興味は冷めていった。

私の周りには、暑苦しく好きだ好きだと騒ぐ男と、恋に恋する男しかいないのかと思うと、なんて自分には男運がないのだろうと嘆いた。
/ 18ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp