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涙はとうに枯れてしまった【NARUTO】

第1章 太陽はまだのぼらない |一人語り


辺りからはべちゃり、べちゃりと水が落ちる音がした。じっとりと体にまとわりつく濃密な空気。ぬるりと仮面の裏まで流れる感触。大きく息を吸い込めば錆びた鉄の味がした。今はもう、はっきりと見えている。後の、遠くの方から声がする。顔を見なくとも分かる。何と言っているのかは分からない。ただ嘲笑っている。私は振り返らない。遠くの方から声がする。私を嘲る声が。遠くの方から声がする。私を―

 ほの暗い中に見慣れた天井が見えた。辺りはひっそりと静まりかえり、窓からはぼんやりと白け始めた空が見えた。
「……」
 時計を手元にたぐり寄せる。まだ三時間も寝ていなかった。
 三時間前には散々シャワーを浴びたのに、ぐっしょりと汗をかいていた。
 気持ち悪い。喉が渇く。胸が焼ける様に痛い。おもむろに起き上がり、そのまま布団を這い出てフラフラと洗面所へ向かった。蛇口をひねれば勢いよく水が流れ出した。しばらくそれをながめ、手を差し出した。冷たい抵抗を感じながら両の手でひとすくい。ばしゃばしゃと顔を洗った。何度も何度も。水がはねるのは気にしなかった。ひとしきり洗った後そのまま手の中にためた水に口をつけた。心地よい冷たさが喉を通る。久しぶりに夢を見た。あまり嬉しくはない。顔を上げ、鏡に映る自分の姿を凝視し、開けっ放しの水に気付いて慌てて閉める。目をつむり、大きく深呼吸をした。
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