第10章 激しい雨の中で
【翔】
俺たちは揃って大学生になった。
3人とも大学は違うけれど、
そこはお隣同士。
相変わらずの関係を続けていた。
潤と付き合うようになって3年が過ぎた。
ひとつ大きな風が吹けば
吹き飛んでしまうやじろべえのように、
俺たちは、微妙なバランスを保っていた。
ただ、当の3人はそれに気付いていない…
嵐の夜が…
すぐそこまで来ていることなんか…
その夜。
家の両親は親戚の結婚式で出掛けていた。
一人だし。
母さんが作って置いて行ったオムライスは、
昼に食べちゃったし。
夜はこれで。
そういう意味なんだろうな~…
テーブルの上には剥き出しの1000円札が…
あ~、めんどくせ…
いっかな~…夕飯くらい抜いても。
そしたらこれ、お小遣いに貰っちゃえるし…
だってさ。
外はこんな天気だし…
夕方から降り出した雨は、次第に雨脚が強くなり、ちょっとコンビニに行くのも、億劫だった。
俺はひとり、リビングのソファーに横になっていた。
あ〜///こんなことなら、
昨日のうちにカップ麺でも買っとくんだった!
するとそこに、玄関のインターフォンが鳴った。
誰だろ?こんな雨の中。
訪ねてくる人なんか………
まさか、
泥棒さんじゃ、ない、よね?
「はぁーい、誰、ですか?」
一応一人だからね?
強盗とかだとやだしさ。
「俺!!」
訪ねてきたのは、智くんだった。
慌てて玄関のドアを開けると、
傘をしっかり握った智くんが、急いで飛び込んできた。
「どうしたの〜?」
「これ…、カップ麺、持ってきた!」
……伝わった……訳ないか…
でも、俺は夕飯を届けてくれたデリバリーのお兄さんを、大歓迎で招き入れた。