第6章 暗闇の中で
クスッと笑った翔くんが、ゆっくりと近付いてくる気配がして、今度は鼻と鼻の頭がぶつかった。
でもこれって、わざとだ。
その証拠に、翔くんは少し余裕の声で、
「早く言えや…」
って…笑いを含んだ声で言った。
「だって///」
「俺さ、智くんの唇ってどんなかな~?って思ってたんだ♪
…こんなだったんだね…」
「しょ///」
言い終わるが早いか、翔くんは俺の言葉を遮って、熱い唇を押し当てて来た。
暫く啄むように優しく触れていた翔くんは、口を薄く開けて俺を誘ってきた。
翔くんのと一緒に開いちゃった俺の唇//
そっと舌先を出すと、翔くんは直ぐに吸い付いて、咥内に取り込んでしまった。
「んんんっ///」
思わず声が漏れる。
「ふふふっ…智くん、可愛っ❤」
顔から…火が出そうだ…
いや、なんなら少し出てんじゃないかって位に頬が熱くて…
だってさ…
俺…
初めてなんだもん…
こういう事するの…
キスだって…したことない…
俺と翔くんの舌が、そこだけ別の生き物みたいに絡み合って、卑猥な水音を立てている。
……どうしよう///俺…もう…
ヤバいよ~//////
息もできない…
いつしたらいいのか、分かんなくて…
そんな俺の様子を、見えなくても感じとったらしい翔くんは、
「智くん…息して!!」
と慌てて唇を離した。
「ふはぁ~っ///」
大きく息を吐き出す俺に、翔くんは噴き出した。
「なんだよぉ~…初めてって訳でもないでしょ?」
「初めてだもん…」
「えっ…?」
「…初めてだから…分かんなかったんだもん…」
「嘘だろ?」
絶句する翔くん…
そんな驚くことかな?
今までそんな機会もなかったし、なにより、
俺はずっと翔くんのことが好きだったんだから…
そうドヤ顔で言ってやりたいけど。
残念ながら、暗闇じゃ…それも叶わない。