第6章 暗闇の中で
【智】
「智くん…」
「なんで??どうして消えたの??
ねえ、落ちたよね?側に落ちたよね?ねえ、翔くん///」
「大丈夫だから…智くん…」
「どうしよう…怖いよ、翔くん…しょうくん///」
俺はもうパニックで、暗闇の中、
必死で翔くんにしがみ付いた。
翔くんは、そんな俺の背中を何度も何度も、
撫でてくれた。
俺を落ち着かせようとするその手のひらは、
俺が知ってる翔くんのそれよりも、
ずっと大きくて、ずっと温かかった。
どの位そうしていただろう…
雷は静かになり、雨が強く叩きつける音だけが聞こえて来た。
「智くん…もう、大丈夫そうだよ?」
「…うん…ごめん…」
俺はゆっくり翔くんから離れた。
でも、手は離せなくて…
暗くて…怖くて…
翔くんはそんな俺のこと分かっているから、
手を繋いだままそっと立ち上がらせてくれた。
その時、雨の音に紛れて、電力会社の車が何か言っているのが聞こえてきた。
『……ご迷惑を…おかけしています…』
「近くの電柱に雷が落ちたんだって…しばらく停電か~…」
「…うん…」
暗闇の中で、翔くんの優しい低音が俺に安心感をくれる。
「真っ暗だし、もう寝よっか?」
「うん…そうだね…」
「俺…客間、だよね?」
翔くんはそう言いながら、携帯のライトを付けた。
ぼんやりと辺りが明るくなり、
翔くんの顔が見えた。
見えたら見えたで、手を繋いで、翔くんの腕にしがみ付いてる自分が恥ずかしくって…
慌ててそれを解いた。
翔くんは、そんな俺を見て笑った。