第22章 forget me not~忘れないで~
【翔】
それから
俺は卒業を待って、
そのままボストンの大学に留学を決めた
智くんは、大手の食品関係の会社に就職して
1年が過ぎようとしていた
仕事にも慣れてきたらしく
顔を合わせれば、大変だ///って
ぼやいてるけど
池袋で仲間と飲んだとき、
智くんの会社の飲み会と遭遇したことがあったんだ
凄く楽しそうだった
ふざけ合って、笑いあっている智くんを見て、
凄く安心した反面、
遠い存在になってしまったことを
改めて感じて、
少し悲しかったっけ……
留学の荷物をパッキングしていると
部屋に母親が入ってきた
「どう~?進んでるの?」
「ああ、まあね…なかなか、まとまんないよ…」
「翔は昔から、荷物たくさん持ってくからね~
最低限でいいんじゃない?向こうでも買えるんだし」
「まあね~」
静かな時間が流れ始めたその時…
「潤くん……元気かしらね~?」
「……うん…元気でしょ…きっと」
潤は……
正確にはJは、あの後、大学を休学して
イギリスに留学してしまった
Jの両親は、1度遊びに行って来たらしいけど…
J……
思い出せば、今でも胸の奥がぎゅうっと苦しくなる
あの日、
ふたりは別の道を選んで歩き出した
もう2度と、交わることも、並ぶことも無いだろう…
だけど、J…
どうか君の幸せを祈ることは許して欲しい
君の人生を
君らしく、歩いて欲しい…
側で応援することは叶わないけど
祈っているから…
J……今も、笑っていてね…
君を愛した記憶と一緒に、
俺は来週、異国へ旅立つ
智くん、潤、俺……
当たり前にそこにあった笑顔を胸に抱きしめて、
俺も旅立つよ…
…………さよなら…J…