第5章 溢れだす気持ち
【智】
「何で急に来たんだよ」
「いいじゃん、たまには…どうせ、彼女だっていないでしょ?」
俺はあの後、岡田に電話を掛け、無理やりアパートに押し掛けた。
こんな時間に、迷惑なのは百も承知だけど。
あそこに……
親が一晩いないあの家に……
潤と翔くんがいるあそこには、いる勇気がなかったんだ。
翔くんは、俺がいるとこでは……
って、そう言い切ってくれたから。
おそらくはないだろう。
でも、潤のあの視線…
前はなかったのに、俺のことを見透かすような、全てお見通しだと言わんばかりのあの目……
耐えられなくて逃げ出してきた。
………
潤のせいだけなんかじゃない。
翔くんのせいでもない…
俺が……
あの二人といると、胸の奥がざわざわして、何故だかぎゅうっと苦しくなって、見ていられないんだ。
その症状は、日々酷くなっていき、このままじゃ俺、あいつらと一緒にいられなくなる……
RRR♪〜RRR♪〜…
「ほい♪…うん、あ〜、今ダメなんだ…大野…そっ!
違うって!…そんなんじゃないよ…ははは…
分かったってば…おお…はいはい…うん、明日な…」
不意に、岡田にかかってきた電話。
相手は誰だか分かんないけど、なんか岡田の様子が急に変わった。
電話の相手と岡田とのやり取りから漂ってくる甘い雰囲気…
なんなら、鼻の下も伸び気味だし…
間違いない…
疎い俺でも分かる。
電話の相手は岡田の恋人だ。
なんだよ…ここでも俺、お邪魔じゃんか///
「…今の…彼女?」
恐る恐る聞いてみると、岡田は、
「彼女…っていうか…まあ、そうだな…」
…そっか…