第4章 揺れる想い
【智】
翔くんと潤が学祭に来た。
絶対に見られたくなかったのに…
あんな格好してる俺のこと。
その日、終わってからクラスの仲間と軽く飯を食べて、家に帰ったのは9時を回った頃だった。
潤に会うの、嫌だなぁ…
もしかして、翔くんも一緒に居たらどうしよう…絶対、揶揄ってくるに決まってる!
あの服、洗濯するために持ち帰ってる、ってこと、何としてもバレないようにしなきゃ!
翔くんなんか、面白がって…
「ただいまぁ〜」
こそこそと玄関を入ると、翔くんどころか、潤の靴もなくて。
「おかえり!言われたバック、ちゃんと届いた〜?」
リビングで、テレビを観ていた母さんが振り替えって言った。
本当は、母さんにも、『何で潤に頼んだんだよ』と、恨み言のひとつも言ってやらなきゃ!
と、思っていたけど。
「あ…うん、ありがと。…潤は…まだ、帰ってないんだ…」
「そうなのよ〜、翔くんとまだ一緒なのかしら?遅くなるなら、連絡してきて欲しいわよね〜、全く」
………そうなんだ…
まだ、帰ってないんだ…
……な〜んだ…心配する必要なかったのか……
「智、早くお風呂入っちゃいなさ〜い」
「うん…分かった…」
湯船で、俺を見てクスクス笑っていた翔くんの顔を思い出していた。
揶揄われなくて、よかったよ。
帰ってくる前に寝ちゃって、翌朝も早く出て、顔を会わせないようにしなきゃ…
しつこく言われたら、たまったもんじゃないよ。
でも、メイド服を洗濯して乾かしても、潤は帰って来なかった。