第16章 turning point~転機~
部屋に入ると、背中越しに翔くんが抱き締めて来た。
「…潤…」
「翔くん…映画、観るんじゃ、ないの?」
そんなの分かってるくせに、そんな台詞、
どの口が言ってんだって話だよ…
「潤は、映画、観たいの?」
「………」
そう来たか…
俺が何しに来たのか、分かってるから言ってる…
翔くんの意地悪だ。
ネットで買ったローションなんか持参で来てる俺を…翔くんは、ちゃんと分かってる…
「俺は、潤が欲しいよ?潤は??」
耳元で囁く翔くんの低音が、背筋を駆け上がる。
「……俺は…俺も、欲しい…翔くんが…」
「んふふふ…素直な潤、大好きだよ♡
シャワーは?」
「してきた…」
「ヒュ~♪準備万端~」
「だ、だって!!」
翔くんに揶揄われて、顔が熱くなった。
そんな俺の身体をくるりとひっくり返し、
おでこをこつんと合せてきた翔くん…
「潤…可愛いよ…今すぐ、シよ♡」
そう言って、翔くんは、後ろも見ずに、
器用に部屋の鍵をかけた。
「じゅん…」
翔くんが俺の背中を抱き寄せ、唇を合わせて来た。
最初っからその気だったし…
なんなら、待ってたんだから。
少しの間、唇を啄むように弄び、俺がそっと差し出した舌先に、翔くんも自分のを絡めて来た。
ぬるっとした温かさに、俺は一瞬にして粟立つ…
いやらしい湿った水音が部屋の中に充満する。
「…あっ…しょ、う…くん…」
「んっ…潤…可愛い…好きだよ…」
絡め合い、戯れ合うようなキスは、
どんどん加速して激しくなっていく…
咥内を、別の生き物のような翔くんの舌が動き回り、俺の思考は、甘く溶けていく。
いつの間にか、上のシャツを脱がされ、
翔くんの温かい手が、俺の首筋から肩、肩から胸へと這っていく。