第16章 turning point~転機~
【潤】
翔くんに言えないことがあった。
聞きたいことも……
ひとつは…
翔くんはこの頃、夜出掛けていて、いないことが多くなったということ。
電話しても、『友達の家』とか、『飲み会』とか、理由はいろいろだったけど。
当然、心の中に、小さな疑念がわき上がる。
だけど、次に会った時の彼は、全然変わらなくて、いつも眩しい笑顔で、『潤』って……
身体を重ねる時も、いつものように、
優しく、激しく、愛してくれた。
智とのことがあってから、
翔くんはいつも、はっきりと、
ちゃんと愛の言葉を紡いでくれるようにもなった。
『愛してる』
『潤だけだよ』
って………
だけど好きだから…
愛してるから、不安になる。
いつか、翔くんが、
どこか、俺の手の届かないところに、行ってしまうんじゃないかって。
あと、もうひとつ…
俺は、最近記憶のない日があると感じるようになった。
毎日ではない。
週に……二回。
水曜と土曜の2日だ。
どっちの日も、翌朝になると、
ベッドで目覚めるから、それまでは気付かなかった。
だけど、その翌日、ものすごく疲れてたり、
クローゼットの奥に、見たことも無い服があった時は、もう、恐怖だった…
自分に、何が起こっているのか…
自分はどうしてしまったのか?
誰にも話せず…
翔くんにさえ言えずにいた。
だけど、この頃は記憶のないその日に、必ず翔くんから着信があるようになった。
そして決まって俺は受けていない…
翔くんの着信、バイトの時は携帯を持ってないから、出られないけど、翔くんはそんなの分かってる。
分かってるから、バイトの時はLINEはともかく、電話はしてこなかったのに…
わざと、俺が出られないの分かってて、それを確かめるような着信……
翔くん……
もしかして、
何か知ってるの??