第14章 desire〜欲望〜
「座って、なんか飲む?」
Jがさりげなく翔の腰に手を添えている。
「……うん…あ、やっぱ、いいや」
「なんだよ、それ…」
「だってさ〜」
…………そういう先入観で見るからなのか。
明らかに、Jの翔を見る目が変わった気がする。
翔もまた、甘えるような、ハニカムような…そんな目をしてJを見ている。
「翔を駅まで送ってくるわ」
「いいよ、俺自分で帰れるから…」
「ダ〜メ!変な輩に持ってかれたらどうすんだよ〜」
「J…みたいなぁ〜?」
「ははは、それが一番危ねぇな〜」
冗談を言って、
見つめあって笑い合うふたり……
決定だ。
今まで、VIPでJは翔を抱いていた。
あれほどふたりになっても、何も進展のなかったふたりが、なぜ?
今夜、ふたりに何があった!?
Jが翔と出ていってしまうと、雅紀は、
「…………もう、終わりだよな…」
独り言のようにポツリと呟いた。
青ざめた雅紀に、掛ける言葉が見つからない…
俺だって……
「…ニノ…」
「ん?」
「………ごめんな……」
雅紀…………
お前が悪いんじゃない。
こんな時に、俺の気持ちに寄り添おうとする雅紀は、すげえな……って。
そう思った。
抱き合って泣くのとは違う。
Jは、俺たちだけのものだった訳じゃない。
彼の行動を、心変わりを、
裏切りだって責めることもできない。
雅紀……
今になって分かったよ。
俺たち三人の関係って、
蜃気楼のようなものだったのかな?
確かに見えると信じていたはずの景色は、
天気が変われば、一瞬で無くなってしまうものだったんだ……
儚く、脆い、幻のように……
翔とJの変化を感じたのは、
俺と雅紀だけじゃなかったはず。
それほど、ふたりの変化は一目瞭然だった。