第3章 悪戯
【翔】
金曜日の夜、俺は大学のゼミの仲間と、打ち上げに来ていた。
若者の集団で賑わう居酒屋。
俺たちは、酒も進み、みんないい感じに酔っぱらっていた。
…あ~、ちょっと飲み過ぎちゃったかな~
少し酔いを醒まそうとトイレに立った俺は、そこに意外な人を見つけた。
……潤…?
そう言えば今日は友達と飲みに行くって言ってたっけ。同じとこだったんだ。
潤を見つけて嬉しくなった俺は、声を掛けようとその集団に近付こうとして脚を止めた。
男女が4人ずつ向かい合って座っていた彼らは、ちょうど席替えを始めるところで。
男女が交互になる様に座り直した。
あれって…
合コンか…
あいつ、そんなこと一言も言わなかったじゃん!
俺に背中を向けて座った潤は、当然俺の存在には気付かない。
俺は、携帯を弄る振りをして、潤の集団の様子を伺った。
潤は、両脇に可愛らしい女の子を侍らせ、鼻の下を伸ばしている。
…まあ、伸ばしていないかもしれないけど…楽しんでることは間違いないな…
あいつ……
女の子と合コンってさ。
そんな気もないくせに。
潤の表情は分からなかったけど、前に座っている女の子も、明らかに潤に色目使ってる。
横に座った子なんか、さっきから何かにつけて、潤にボディタッチを繰り返している。
そりゃあ、あれだけのイケメン、そうそう居ないもんな〜女子が色めき立つのも頷ける。
潤がどんな顔しているのか見えないのが歯痒い。
俺はふと、ちょっとした悪戯を思いつき、ゆっくりとその集団に近付いた。