第13章 encounter〜出会い〜
【翔】
雅紀と渋谷駅で待ち合わせした。
塾の合宿で仲良くなった雅紀は、
詳しくは話さなし、聞いてもいけないかのと思って、踏み込まなかったけど。
苦労してるみたいだった。
大学も、親の援助を当てにしないで、
自分の力で通ってるみたいだし…
のほほんと、当たり前に親の金で気楽な大学生やってる俺にとっては、
雅紀は、寧ろ眩しいくらいの存在だった。
そんな雅紀が、『一番割のいいバイト』
と言った渋谷のclub。
俺も友達と渋谷や六本木のclubに行ったことはあるけど、
あの中で働くのは、なかなか大変だと思う。
酔っぱらいや、少し怖い系の人も来るだろうし。
偏見なのかもしれないけど、
俺には無理だな…って思ってた。
「翔!ごめん…」
待ち合わせの場所に、雅紀は少し遅れてやって来た。
「俺も今来たとこだよ」
「そう?じゃ、行こっか」
「うん」
俺が行ったことがある店は、
センター街のど真ん中、
みたいな場所だけど、
雅紀がバイトしているというお店は、
裏道を何度も曲がった
その先にあった。
シックで落ち着きのあるclubには、
『Asterisk』というプレートがかかっていた。
「ここなの?」
「そ!さあ、行こ!」
雅紀はすれ違う人たちに軽く挨拶する。
ここでは、雅紀を知らない人はいないみたいに慣れた感じ……
その後ろに、キョロキョロしながらくっついている俺に、そいつ等は不躾な視線を送ってくる。
雅紀は、俯く俺の手首を掴んで、
「Jに紹介するよ!」
と、顔を左側を歪ませた。
………今のって…もしかして、ウインク、かなぁ?
俺の肩を抱き寄せた雅紀は、
「Jと仲良くなれば、みんな、一目置くから!」
「J〜?」
「そう…今日は水曜だから、
来てるはずだけど……
…あ、いた…ほら、あそこ♪」
………
………………息が、止まった…………